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娘と共に生きる意味
「伊織、お母ちゃんの話聞いてるん?」
「あー、はいはい。わかったから」
「わかったんやったらさっさとお風呂入って寝なさい!高校生にもなって、まだ親にこんな注意さすんか!」
「嫌やったらせんでええよ」
「アンタがすぐ風呂入らんからやろが!!明日も部活で早いんちゃうんか!」
「あーウザいウザい。近所迷惑やから」
「ウザいってアンタ、親に向かって」
バン、と扉を鳴らして娘は部屋に篭ってしまいました。
娘は高校に上がってもずっと反抗期で、最近はろくに会話もできていないのです。
「ほんまにあの子は」
口をつく独り言は、4畳半の狭いリビングに一瞬響き、そして消えました。
あの子が部屋に戻って行き場を失った私の視線は、やがて一枚の写真にとまります。
テレビ台の隅に隠すように置いてある伊織と私、そして夫の写真です。
夫はあの子が2歳の頃、病気で亡くなりました。
夫がなくなって、気の済むまで泣きじゃくったあの日を今でもたまに思い出します。
泣いて、泣いて、泣き腫らして、そして、泣き止んだあの日から、私の人生はずっと伊織のものなんです。
ちっちゃな手で私の服を掴むこの子を、私は一生かけて守ると誓いました。
父親のように家族を守るためには、たとえ嫌われようとも本当にあの子のためになることをしなければなりません。
ウザがられようが、煙たがれようが、あの子のために。
あの子は昔から心の優しい子です。
のんびり穏やかな性格は夫に似たのでしょうか。
ただ、のんびりしすぎて抜けていることころや、見通しが甘いところがあります。嫌なことを後回しにして、結局放ったらかしにしちゃうんです。
そういった駄目なところを、嫌われてもいいから言い続けると、私は決めたんです。
私にはもうあの子しかいません。
あの子が私の全てなのです。
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