32歳、無職

2/6
前へ
/24ページ
次へ
ある晴れた日の昼下がり。 まだまだ芯から冷える季節。 そこそこ大きな公園のベンチで1人、俺はワンカップを片手に目の前に流れる景色を無気力に眺めていた。 目線は前を向いているが、何かを見ているわけでもない。 落ち着かない。 毎日、外から見ていた近所の公園。 こうして園内に入ってゆっくりする事なんて今後もないだろうと思っていた。 はじめて入った公園は、人がまばらで大きめな外観のわりに静かな環境で、ひといきつくにはちょうどよかった。 いつもならまだ会社回りをしている時間だ。 こんなところでひといきなんてしている暇はないのだが、今日から俺は無職。 広瀬ヨシロウ、32歳。 寒い季節に勤めていた会社を10年目にしてクビとなる。 もう上司にも、取引先にも頭を下げる必要はないのだ。 それにしても、落ち着かない。 そもそも、なぜ無職。 ついさっきまで見慣れた職場にいたはずだ。 なぜ俺は、無職になりこんな来たこともないような公園でワンカップ片手にベンチにかけているのか。 それは今朝のことだった。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加