モノトヌクモリ

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 ――衝撃。  痺れるような、殴られたような。  視界が暗くなる。少年の腕が抱き留めるように回された気がした。 「やさしいひとはいいね。あたたかくて。あたたかいひとの近くには、あたたかいひとがいる。ぼく、そういうひとがだいすき。……家族って、おかあさんって、あたたかいものだって言うけど、ぼく、ずっとわからなかった。でも、『ぼくを殴らないようにした』おかあさんは――おかあさんの体は、あたたかかった。いいなって思ったんだ。あたたかいのって、いいなって。だから、あたたかいひとはすきだよ。女の人の体はやわらかくて、あたたかくて――おなかの中も、とってもあたたかい。おねえさんも、おともだちに花を供えに来るくらいだもんね。あのやさしい人が、だいすきだったくらいだもんね。とってもあたたかいんだろうなぁ……」  何かを囁かれている。でも理解できない。意識が闇に沈む。  その後のことは、何もわからない。
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