モノトヌクモリ

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 暗い路地だった。  地面に花を置き、手を合わせる。  がやがやとした喧騒が聞こえてくるそこが、友人の死体が発見された現場だった。  中学で知り合い、就職してからも連絡を取り、約束をしては会うような間柄の友人だった。  女性ばかりを狙った連続殺人、の被害者の一人として目されているらしい。  現場検証も終わって、封鎖も解かれたそこに、凄惨な空気はない。  当たり前だ。殺害現場はここじゃない。別のところで殺されて、ここに運ばれたというのだから。  その連続殺人の特徴は、女性ばかりが被害者であること。  死後間もなくして子宮を含む腹部を掻き切られ、抉られていること。  死因に一貫性はないという。現在判明している死因には、毒殺も、絞殺も、刺殺もあるそうだ。  ――……友人は、心臓を一突きだった。
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