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――なんで俺が待たないといけないんだ。
だが、弦はソファから動けないでいる。大学時代の先輩、後輩の関係性が抜けていない。日比谷に逆らえない気持ちになってしまう。
彼がチラシを持って、ソファに歩いてくる。
「俺の会社の近くにヨガスタジオがあるんだ。朝ヨガもあるらしくて、ちょっと気になっててさ」
ローテーブルに紙を置いて、日比谷が「お前の会社ってどこにあるんだ?」と聞いてくる。
「有楽町ですけど」
「日本橋と近いじゃん。月曜日、朝ヨガ行こうぜ。七時二十分から八時十分のコマ。大丈夫だよな?」
「え、ちょっと……なんで俺も?」
「やれって勧めたのはお前じゃん。自分の意見に責任持てよ」
「責任って」
「お前が出来ないことを、俺に勧めるのか?」
威圧感たっぷりの声で言われ、弦は返事に窮した。
「仕事始まるの何時からだ?」
弦は咄嗟に、朝ヨガを断れる時間を考えた。八時半、電車を使えばギリギリ間に合う。八時――そんなに早く始まる会社は、あまりないだろう。
面倒になって、弦は「九時です」と答えた。本当は九時半だが。
「じゃあ、朝ヨガ行けるな。俺が二人分ネットで予約しとく。レッスン料は俺が出すから。文句ないだろ?」
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