弦の日常

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弦の日常

 顔のすぐそばで、メロディアスな口笛が鳴りだした。弦は反射的に手探りでスマホを取り、アラームのストップボタンを押そうとして、やめた。「フッ」という、男声の掛け声と合わせるようにして上体を起こし、スマホをベッド脇のチェストに置いた。音楽は流しっぱなしにする。――DAYAの『Sit Still, Look Pretty』。ここ最近、一番気に入っている曲だ。  頭がぼんやりしている。体もシャキッとしていない。かなり寝足りない感じ。当たり前だ。いつもより二時間も早く起きたのだ。 弦はベッド脇に立ち、声を出して伸びをした。 「めんどくせー」  といいつつも、ベッドの反対側の壁まで歩き、斜めに配置している三段の洋服ダンスの一段目からヨガウェアを引っ張り出す。ネイビーのドライメッシュTシャツに、先細りタイプのジャージーパンツ。どちらもナイキだ。二年以上使っていないから、鼻を近づけると防虫剤の臭いが微かにする。昨日のうちにタンスから出しておけば良かった。 デパートの紙袋にヨガウェアを突っ込み、寝間着のままキッチンに向かう。     
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