冷たいガラスの向こう側

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 玄関を開ける音がした。「ただいま」も言わないのは、きっと明だ。  リビングのドアが開くと予想通り、ふてくされた顔をした明が入ってきた。もう寒い季節だというのに、コートも羽織らずにマフラー一つで通学している。 「おかえりなさい。もうすぐご飯できるから、少し待ってて」 「いらね。帰りにハンバーガー食ったし」  そう言いながら冷蔵庫を開け、牛乳パックに直接口をつけて飲む。 「やめなさい、行儀悪い」 「うるせぇな。どうせ全部飲むんだからいいだろ」  冷凍庫から唐揚げを出して皿に並べながら、明の姿を横目で眺める。  十四歳、反抗期真っ盛り。会話は「うるせぇ」「うざい」「むかつく」の三語が大半を占める。親の言うことには条件反射のように片っ端から反発する。 「あ、ちょっとー! パックに口付けて飲むとか最悪!」  入ってくるなり騒ぎ始めたのは十七歳の雅美だ。 「うわ、今日唐揚げ? 太るから脂っこいのは止めてってこの間言ったじゃん。あたし野菜炒めだけにしよっと」 「飯食うの止めたら。すぐ痩せるぜ」 「は? 意味分かんないし。ジャンクばっか食ってるあんたは頭もジャンクだね」 「うるせぇよ。うぜぇな」  そんなことを言い合いながら階段を登っていく。     
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