卒業論文

4/8
前へ
/8ページ
次へ
 部屋を出て廊下に出ると、まだ屋内なのにびっくりするほど寒かった。 「極寒だったね」  コンビニ入って一言、美希が言う。やばかった、とコンビニのあたたかさにホッとしつつ同意する。  ぼくらは並んで棚を眺めつつ、これおいしい、とか、これはカロリーがやばい、とか商品の情報をあれこれ共有する。  1年の時に出会って、四年で同じゼミになるまで、美希とはあまり接点がなかった。教室や懇親会で一緒になると少ししゃべるくらいの距離感だった。でも、会うと声をかけたくなる接しやすさがやはりあった。  それがゼミで同じになってからは、週に1回一緒にご飯を食べる間柄になった。と、言っても週1のゼミ終了後に学食で食べていただけだけれど。ほかのゼミ生がいることもあれば、いないこともあった。二人の方が多かった気がする。  その時もこうやって何食べようかなあ、と楽しそうに悩んでいた。今年が終わって、卒論を提出したら、もうそういうこともなくなるんだろうか。もしかして、こうして一緒にあーでもないこーでもない、と言いながら悩むのも最後かもしれない。 「どうしたの」  言われてハッとして美希の方を見ると、のぞき込むように美希がぼくのことを見ていた。 「あ、いや、別に」     
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加