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おいしい。
本当に、いつもよりおいしい気がする。
「うーん、おいしい。最高だね」
「うん。マジでうまい」
でしょ、と美希は満足げにほほ笑む。
「男子は知らないんだろうけど、これがおいしい肉まんの食べ方だよ」
どういうことかわからず、ぼくが返答に悩んでいると、そんな表情を見てか満足げな顔をさらにどやっとさせて美希は言う。
「半分こにすると、具から食べられるでしょ。だから1口目からすごくおいしいんだよ」
あー、と感心してぼくは2回うんうん、とうなずいた。
「男子は一人で1個平気で食べちゃうもんね。知らなかったでしょ」
「知らなかった。素直に感心してる」
良かった、とほほ笑んでから美希はもう1口食べる。ぼくも改めて食べる。やっぱりおいしい。
「これで肉まん食べる度に私のこと思い出してくれるかな」
ポツリ、と美希が言った。
え、とぼくが反応すると、違うの違うの、と美希はかぶりを振った。
「ほら、年が明けたらすぐ春休みで、みんなバラバラでしょ。
そうすると会うことも少なくなっていって、いつかみんなお互いのことを忘れていっちゃうのかなって思って」
「実際、大学で会えば話すけど、連絡取り合わない同期とかいるもんなあ」
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