卒業論文

7/8
前へ
/8ページ
次へ
 違う、そういう話じゃない。そう思いながらも口から出る言葉は無難な言葉ばかりになってしまう。  さっき、同じようなことを考えていた。同じこと考えていた、と言えば良いのに、照れなのか、チキンなのか、素直な言葉が出てこない。 「うんうん。そう、そうなんだよね。だから印象に残らなきゃって必死」  違う話なのに、違う話にしようと美希も話に乗っかる。  あいつは連絡とらないだろうな、とか。  行方不明にならないか心配なやつ、とか。  そうじゃない話が白い息になってふわっと広がっては消え、ふわっと広がっては消える。  違う、と思いつつも、大学で会えば話すけど、それ以外で美希と連絡しあったことはなかった。気づけば日常になっていたし、自然な感じに毎週会っていた。  歩きつつ食べていた肉まんもついに食べ終えてしまった。ポケットに突っ込んでいたコーヒーを取り出して握る。まだ少しぬくもりを感じる。  同じように美希も缶を取り出して握った。 「まだちょっとあったかいね」 「そうだね」  そう言ってから2、3歩歩く。  白い息が途切れた。 「それでさ」  何がそれでかわからないけど、それでとぼくは言った。 「年明け、初詣一緒に行こうか」  一瞬、歩みが止まった。 「うん。甘酒がおいしい神社があるよ」 「甘酒基準なんだ」     
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加