短編

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 私にはちょっと変わった体質がある。  普通の方法では「体温を調節することができない」のだ。  どんなに暖かい肌着を着ても、セーターを着ても、ちっとも暖かくない。熱を感じ取れないだけでなく実際に寒いので、すぐに凍えてしまう。  そんな私が暖かいと感じられるのは、「誰かの思いがこもったもの」だ。  心を込めて編んでもらった帽子。大切に保管されていたカーディガン。一生懸命選んでくれたマフラー。  そこにこもった思いが、私が感じられる唯一のぬくもり。  だから冬用の制服を着ていても、どれだけ市販品で身をくるんでも、私には裸同然に感じられてしまう。入学したてのころ、「服装違反だ!」と怒られてマフラーやらカーディガンを一式取り上げられたときは、低体温症で倒れてしまったくらいだ。  今では、そのとき居合わせたゆかりちゃんの協力もあって、快適なあったかライフを送っている。  小さい頃から家族を心配させて、不便な体質だけれど、この体質に生まれて嫌だと思ったことはない。  だって、私が暖かさを感じるとき、一緒にとても幸せな気持ちになれるから。
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