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かつて人類がマリアナ海溝と呼んだ、水深1万メートルの深海。
高温の熱水噴出孔帯域に着底した中枢AIに取り憑いた、嫌気性ケイ素微生物の群体は、
AIの破損した半導体シリコンを補完し、一時的に通電に成功。
人類と外宇宙知的生命の記憶を取りだし、群体の共有情報として保存。己の遺伝子情報へと反映を始めた。
しかし、AIが最後に“あたたかい”という熱概念で表現した、人類最後の他者への意識
“ぬくもり”については、個にして全である群生生物には理解できず、不要なものとして削除された。
「知識?」
「得た」
「生きる」
「生きる、長く…」
「生きる、長く、広く…」
「生きる、長く、広く、大きく…」
「生きる、長く、広く、大きく、強く…」
「生きる、長く、広く、大きく、強く、賢く…」
…∞
深い海の闇で、新たな地球の支配者が蠢き始めた。
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