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信じられない。私が脳だけ?
彼らの姿も形もわからないが、その身体の組織を移植して、私の脳を蘇生させたというのか?故郷の海の底に、そんな知的生命体の集団がいたなんて。
大発見だ!
いや、この発見を喜ぶ人々は、もういない。
「知的生命?海の底?わからない。私たちは、私たち。ここ、私たちすみか。
あなた、どこから?」
人間とは異なる、冷たく、感情のない問いかけ。
私は、ついさっきたぐり寄せた記憶を、再び思い起こす。
浮かび上がってきたのは、旅立つ前の故郷の記憶。
私の故郷は年々気温が低下し、そこで生まれる子供も世代ごとに寿命が短くなっていた。
暖かい土地への移住も検討されたが、多くの人が故郷に残ることを望んだ。そもそも寿命が短くなるという宿業を抱える以上、別の土地で生きたところで、いつかは滅びるだけ。
ならば、この業から脱する方法を見つけることこそ、故郷の未来を生かす道だ。
どこかの誰か、遠い国の誰かが、生命を長らえる方法を知っているかもしれない。
「お前はこれから、長い旅に出る。寂しいだろう。苦しいだろう。でも、大勢の生命を救い、未来を切り開くことは、お前にしかできない。死ぬな。必ず、還ってこい。待っているぞ!」
私の父親は泣きながら、笑顔で私を送り出した。
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