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「獰猛な戦士ねえ」
船乗りは口を開いた。
「でも、迎えに行くんだろ、そいつの立体映像くらい持っていないのか?」
「持っているわよ」
ジーナはベルトに着けたデータポッドを指で叩いた。
「でも、あまり急いで見る気はしないの。どうせこれから何年もずっと顔を合わせていく相手だから」
首をかしげる船乗りに、言葉を続ける。
「そいつは戦功をもとに推薦を受け、帝国の士官任用試験を受けてあっさり合格したのよ。めったにないことだけどね。現地徴用から士官に任官した場合、司令部直属の戦艦に配属して二年間のパトロール航海に就かせるのが慣例なの。改めて規律を叩きこむってことね。その時には司令部の下士官が事務処理や情報管理を補助する従卒として配属されるの。私が迎えに行かされたのは、おそらくそいつの従卒に任じられるってことなの」
ジーナは間近に迫ってきた宇宙港に視線を移した。建物の向こうに、開放水面に停泊している数隻の宇宙艦の船体の一部が見える。
「従卒の一番の仕事は新任士官が引き起こすトラブルを処理すること。外宇宙のぐだぐだの軍規の中で育った新米士官が、司令部直属部隊のきっちりした規律の中に組み込まれるのよ。任務の一つ一つで周りと衝突するに決まっているわ。従卒は間に立って事態を収拾するのが役目。代わりに謝って回る一方で、機嫌を損なわせないよう士官をおだてたり、うまく言いくるめたりしながらね」
「なるほど、そいつは大変そうだ」
船乗りは顔をしかめて頷いた。
「でもね、悪いことばかりではないの。ずっと切望していた宇宙への扉が開けるのだから」
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