隠し味

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その目の正体は知っている。私は店主に笑顔で返すと、少年の下にラーメンが届けられ、私は遠慮がちな彼の背中を叩いた。 「食べてみな」 少年はまるで弾かれた鉛玉のように我を忘れてラーメンにがっつくと、しばらくしてから我に返り、忘れてたとばかりに私の方を向いて一言告げた。 「こんなにおいしい物初めて食べた!おじさん、ありがとう!」 私は満足そうにフッと鼻で笑うと、私もラーメンを啜った。 「・・・え?」 それは突然だった。さっき食べた時は紛れもなくどこにでもある屋台ラーメンの味。でも、今ここにあるのは、紛れもなくあの時のラーメンの味。20年という歳月を越えて今も私を恋焦がしたあの味。私は目が真ん丸になるほど驚いた後、隣にいる幸せそうな少年を見て、その正体を察した。 「そうか。なんだ、そういうことか・・・」 おいしいラーメンの決め手は、何も味や香りだけではないらしい。私の目から少しだけ涙がこぼれ、塩味に拍車がかかる。少年は突然涙を流し始めた私を心配した。 「おじさん?どうしたの?大丈夫?」 「ああ。大丈夫だよ。これは悲しくて泣いてるんじゃないんだ・・・」 こんな簡単なことに気づくのに何年かかったのだろう? 私は淡泊な塩味に人のぬくもりの温かさを感じた。
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