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前の彼女の時と同じように、俺は高岡さんからの連絡先を全てシャットアウトした。しかし、彼女は別の電話番号やメールアドレスからしつこくアクセスしてきた。それらも片っ端からシャットアウトしていくと、さすがに連絡は全くなくなった。ようやく解放された……はずなのに、俺の心は晴れなかった。やはり、裏切られるのにはそれなりにダメージがあるものだ。慣れるようなものじゃない。
そんな、年末も押し迫ったある日のことだった。
『桜田、と申します。実は弊社の高岡のことで、お話ししたいことがあるのですが……』
職場の俺の電話に、女性の声でこんな電話がかかってきた。
あの高岡さんのことだよな……
「お話しすることはありません。失礼します」
俺が電話を切ろうとすると、
『待ってください! 彼女は何も悪くありません! 悪いのはわたしなんです! お願いです、話を聞いてください!』
という大声が、受話器から聞こえてくる。
え……どういうこと?
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「本当にすみませんでした!」
桜田さんは五十歳くらいの、ややふっくらした女性だった。待ち合わせの喫茶店。名刺を見ると、高岡さんの部署の部長に当たる人のようだ。桜田さんはテーブルの向こうで頭を下げっぱなしだった。
「ええと……頭を上げてください。どういうことなのか、説明してもらえますか?」
彼女の話はこうだった。
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