不可逆過程

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 婚約者が浮気しているようなフシがある、という相談を高岡さんから持ちかけられたのが、今年の九月頃だった。それで、彼女は彼女自身の離婚の際に使った興信所を紹介した。調査の結果真っ黒だったことが分かり、高岡さんは婚約破棄、(元)婚約者と浮気相手に対して慰謝料を請求した。と言っても微々たるものだったらしいが。  しばらく高岡さんは落ち込んでいたようだが、最近は随分笑顔を取り戻してきていた。そんな時、取引先の会社の御曹司が結婚相手を探している、という話を聞いた。その御曹司は個人的によく知っており、ちょうどいいと思い、彼女は高岡さんに、その御曹司と会ってみたら? と言ったのだそうだ。高岡さんは最初はあまり気乗りがしなさそうだったが、「気に入らなかったら断ってもいいから」と言うと、了承したという。  ところが。  その御曹司と会った翌日から、高岡さんはずっと病欠で会社を休んでいる。何があったのか聞こうとしても、上手く連絡がつかない。御曹司の方に話を聞いてみると、彼は彼で落ち込んでいた。  "あの娘、彼氏がいたんですよね……"
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