人生最大の、というほどでもないピンチ

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人生最大の、というほどでもないピンチ

 ここのところの厳しい冷え込みで、ぼくは完全に風邪をこじらせてしまった。  少し前から、なんか喉痛いなぁとかちょっと咳が出るなぁと思ってはいたけど、今日の昼過ぎくらいから背中を悪寒が走り始めている。  これはヤバイなと考えながらなんとか学校での授業を最後まで乗りきって、友だちからの放課後の遊びの誘いもぜんぶ断って足早に帰宅してきた。  今日はあったかいものでも食べて熱めのお風呂に入ってあったかい布団で早めに寝よう。そうだ、鍋物にしよう。龍は夕飯はいらないって言ってたし、一人分なら鍋焼きうどんでもいいな。みそ味で、ねぎとおあげと卵も入れて、のどごしもやさしくつるつるっと……うんよし、いいな。そうしよう。  などと、頭のなかで献立のコウソウをしながら我が家の扉を開ける。  すると。 「寒っ!」  ダウンジャケットをしっかり着込んでマフラーも手袋も装着して、それでも北風がぴゅうぴゅう吹いて寒くてたまらない外からやっと屋内に入ったっていうのに、玄関は下校の道中よりももっとずっと寒かった。  ドアから縦に伸びている廊下は昼間だけど薄暗く、奥のほうの床は霜が降りたみたいに白々としている。その上をうっすらと、凍えた冷気が溜まって音もなくきぃんと静まり返っていた。 「ああ……最悪だ」  立ち尽くして呟いたぼくの足元に、バスケットボールくらいの雪の塊がうごうごと這い寄ってくる。二つ三つ、どこからともなく沸き出してきては、真ん中の一つ目をぐりんと動かしてぼくをホカクする。  何を隠そう、ぼくん()には、魔物がいるのだ。  正確には、ワンレン・イケイケ・性悪の雪女が。
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