平々凡々

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平々凡々

 登校時間を少し過ぎ、授業が始まるのを告げるチャイムが鳴った頃、小学校の裏口からこそこそ忍び入るようにして、学校に入った。昇降口に向かい、音が響かないよう、やっぱりこそこそと上履きに履き替える。そうして私が向かうのは、自分のクラスではなく保健室だった。  ノックを三回。私の印。先生は私とわかっているから、「どうぞ」と一言。ちょっと低いその声に、最初は怖いなんて思ったものだけれど、今となってはほっとする声になってしまった。  保健室の扉を開ける。先生は保健室の真ん中辺りにある、ファイルやパソコンが並ぶ自分の机について、書き物をしている最中のようだった。私が入ってきた気配に、ペンを握ったままこっちを向く。綺麗な、ちょっと明るめの長い髪を小さく揺らして、「おはよう」と言った。 「おはようございます」 「今日の調子は?」 「いつも通りです」 「それはよかった」  短いやりとりをしながら、私は保健室の片隅の机につく。それが私の机だ。  私は、保健室登校をしている。
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