平々凡々

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 私はあと二ヶ月ちょっとで、中学生になる。 「そうだね。もう、そんなに経つんだね」 「はい。……もう、そんなになります」  初めて先生に出会ったのは、去年の春。私が保健室登校になってしまった自分に慣れ切った頃だった。前までいた、お節介で元気がいいおばちゃんの保健室の先生は他の学校に行ってしまって、代わりにやってきたのが今の先生だった。 「どうしたら普通になれますか?」  初対面の大人に、私は決まってそう訊ねる。すると大人はたいてい、綺麗なことを言う。  普通なんて、ならなくていいよ。みんな違って、みんないい。大丈夫。世界はそんなに怖くないよ。 先生と呼ばれる人種はみんな、具体的にどうすればいいかとか、具体的にどう考えればいいかとか、そういうアドバイスを一切くれないで、嘘っぱちを並べ立てる。でも、先生だけは違った。 「うーん、それは難しいね」  先生は正しそうなことを並べたりしなかった。 「普通って、何なんだろうね。私もずっとそれに悩んだ頃があったよ」  そんな風に、私の言うことをちゃんと受け取ってくれたのが、先生だった。 「先生も……わからないの?」 「うん、全然。でも、自分が普通じゃないという自覚はあるかな」 「先生は、普通じゃないの?」     
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