平々凡々

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 私の目に先生は、とても普通の人に映った。容姿はとても綺麗だけれど、全部が世界に馴染んでいて、おかしいところはちっとも見つからない。 「ううん、普通じゃないよ。私、戸籍上は男だもの」 「男……えっ、男って、男の人とかそういう意味の男ですか?」  こんなに普通の女の人に見えるのに? 「うん、そう。でも、自分のことを女だと思っているわけでも、女になりたいわけじゃないの。ただ、この服装がしっくりきて、この格好が好きなだけ。自分でも自分の置き場所がよくわからないんだ。いっそ性別のくくりがなくなってくれたらなあって、いつも思うよ。あ、他の生徒には秘密だよ? 生徒には秘密っていう条件で、ここで働いているから」  ……なんだか、いろいろ、衝撃だった。でも、びっくりした以上に、不思議な感覚が自分の中で芽生えていく。  私の問いかけをそれが当たり前のことのようにすんなり受け入れてくれ、すごく、嬉しかったのだ。  保健室登校は義務感から嫌々やっていただけに過ぎなかった。その感情がちょっとだけ変わった。保健室登校が、楽しみになった。 「ねえねえ、えみるちゃん」 「はい」  記憶の中じゃなくて、現実の先生が私に声をかける。そのくせ、顔は横向きのまま。先生のこだわりなんだろうか。 「今日は先生から質問してもいい?」 「はい」  あれこれ訊くのは、いつも私の方だった。     
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