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「知らないよ。ううん、ちょっとは何があったか教えてもらったけど、それに対して、えみるちゃんが何を思い、何を考えたのか、そういう詳しいところは知らされてないが正確な表現かな。だから、何を受けてそう思うようになったのか、少し気になって。もちろん、話したくないなら話さなくってもいいよ」
「……ううん。先生に聞いてほしいから、話します」
私には、ちょっと痛みを伴う話だから、手の中でもらったチョコレートクッキーの封を開ける。それを口の中に放り込んだ。甘くてさくさく。おいしい。
「……ええと、最初に、私が好きなものの話、してもいいですか?」
「うん」
「じゃあ、しますね。私」
これは、お母さん以外の人にはずいぶんと言っていないことだ。それはとてもおかしいことみたいだから、みんなが知ってしまうことになるあの日まで、ずっとずっと、隠していた。
「蛇が好きです」
「蛇?」
「はい。変、ですか」
「ううん」
……先生は、やっぱり不思議。私の精一杯の告白を、驚きすら見せずに受け入れてくれる。
「うちのお母さん、先生タイプで、どんなことでもけっこう受け入れちゃうんです。だから私が蛇を好きって知ったときも、たぶん、そうなんだくらいで終わっちゃったんだと思います。小学校二年生まで、私にとって蛇が好きのって、猫とか、犬とか、そういうのを好きなのと、まったく同じことでしかなかったんです」
子供のときだったとはいえ、ちょっとおかしいくらいに鈍感だったと、今の私は思う。
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