平々凡々

6/13
前へ
/13ページ
次へ
「知らないよ。ううん、ちょっとは何があったか教えてもらったけど、それに対して、えみるちゃんが何を思い、何を考えたのか、そういう詳しいところは知らされてないが正確な表現かな。だから、何を受けてそう思うようになったのか、少し気になって。もちろん、話したくないなら話さなくってもいいよ」 「……ううん。先生に聞いてほしいから、話します」  私には、ちょっと痛みを伴う話だから、手の中でもらったチョコレートクッキーの封を開ける。それを口の中に放り込んだ。甘くてさくさく。おいしい。 「……ええと、最初に、私が好きなものの話、してもいいですか?」 「うん」 「じゃあ、しますね。私」  これは、お母さん以外の人にはずいぶんと言っていないことだ。それはとてもおかしいことみたいだから、みんなが知ってしまうことになるあの日まで、ずっとずっと、隠していた。 「蛇が好きです」 「蛇?」 「はい。変、ですか」 「ううん」  ……先生は、やっぱり不思議。私の精一杯の告白を、驚きすら見せずに受け入れてくれる。 「うちのお母さん、先生タイプで、どんなことでもけっこう受け入れちゃうんです。だから私が蛇を好きって知ったときも、たぶん、そうなんだくらいで終わっちゃったんだと思います。小学校二年生まで、私にとって蛇が好きのって、猫とか、犬とか、そういうのを好きなのと、まったく同じことでしかなかったんです」  子供のときだったとはいえ、ちょっとおかしいくらいに鈍感だったと、今の私は思う。     
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加