平々凡々

8/13
前へ
/13ページ
次へ
 私の好きなもの、どうしてそんなに嫌うの? 私が好きなものを見せただけなのに、どうしてそんな風に泣き出すの? どうして? そうやって、あの子をなじっているような考えが、ぐるぐる回って、それもまた、つらかった。 「……私がその子を泣かせちゃったから、その子、しばらく学校に来なくなったんです。私みたいに保健室登校でもなくて、本当に、おうちに閉じこもっちゃって。……私とあの子、家、近いんです。あの子からすると私って突然嫌がらせしてきた嫌な子だから、たぶん、会いたくなかったんだと思う。  お母さんはあの子の家に謝りに行きました。迷惑、かけちゃったんです。あの子のお母さんは、たぶん、今も私を怒っていて、たまに近所で見かけるんですけど、いつも睨まれちゃいます」  大の大人に睨まれるのって、いつになっても慣れない。 「えみるちゃんはわざとやったんじゃないのに?」 「……はい」 「そっか。……今もなんて、本当につらいね」 「……でも、私が、悪い気がしてて、しょうがないのかなあ、なんて」 「そんなに自分を責めないの」  先生が珍しくこっちを向いた。私の頭をちょっと撫でてくれる。  ――ちょっとだけ、目の奥が熱くなった。     
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加