ある雪の日

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雪の降る寒空の中 コートを羽織り学園の制服を着た一人の青年が力なく街を歩いていた 彼の名前はフィン ここから遠くある田舎町から芸術家に憧れて単身この街にやって来ていた 鞄の中には展示用に額縁に入れられたまま返却された彼の自信作の絵 そして去年一昨年にコンテスト様に描いた2枚の絵 そして数冊の描き潰されたスケッチブックが入っていた 「はあ・・・」 ため息をつきフィンは足を止める ここはこの街でも観光名所の一つとされてるゲルダ駅 この駅は昔とある芸術家がデザインした歴史ある駅で 駅前の公園には大きな一本の木が立っていた 5年前の戦争ではこの駅も半壊させられていたが今はすっかり復旧していた フィンは落ち込むとこの駅を見て美術家の夢を思い出し 立ち直っていたが今回はそれでは済まされなかった 3年目、学生として最後のコンテスト 働く事よりも描く事を優先にして 住んでいた家の大家にも「奨学金が入るまで待ってくれ」と説得して それほどまで自分を追い込んで挑んだコンテストだった しかし結果は出なかった 帰る場所も無い彼は力無く駅から離れ街を歩きふと路地裏に足を向けた 冬空の下、人が行き倒れている それがこの華やかな町の裏の姿だった。 彼らの多くは5年前の戦争で職や家族や身体を失った者だった フィンは自分自身も明日の朝はどこかの路地裏で 自分の作品を抱えながら眠るように死んでいるのだろう それも芸術家を目指し夢破れた自分の最後らしいかもしれない そんな事を考えながら歩いていた そして寝ているのか死んでいるのか解らない人達の中に小さく動く影に気が付いた
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