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いったいどのぐらいの時間だったのだろう。
やがて彼が私の唇を放した。
夢から覚めたように瞼を開け、まだ間近にある彼の目を見つめた。
漆黒の目はさらに濃く深く見えるほど、強い感情をたたえている。
怒り、嫉妬、労わり?
それとも、渇望……?
まだ現実に完全に戻りきらない頭で、私は彼の目に浮かぶ複雑な何かを捉えようとした。
でも和樹さんが私の身体を放して一歩下がった時、彼の目に浮かんでいたものは水面の下に深く沈むように姿を消し、静かで冷ややかないつもの表情に戻っていた。
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