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鏡の中の自分をもう一度見つめる。
過去はもう振り返るまい。
和樹さんは綺麗だと思ってくれるだろうか?
そつのない彼のことだから言葉では言ってくれるだろうけれど、どうか本心でそう思ってくれますように……。
「それでは参りましょう」
美容室の外で待ち構えていた担当者に付き添われ、不安と緊張と期待を胸に、私は和樹さんが待つ写真室へと向かった。
「こちらで少々お待ちください。新郎様はお隣の控室にいらっしゃいます。お話されるようでしたらどうぞ」
花嫁用の控室に通され、ドレスを崩さないよう気をつけながら、小さなスツールに腰を下ろす。
しばらく待たされている間に、私は大勢のスタッフの前ではなく、プライベートで和樹さんに最初のお披露目をしたくなった。
私は花嫁という非日常の姿になって浮かれていたのかもしれない。
この時、愚かにも私はこの結婚が本物であるかのように錯覚していた。
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