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隣の控室のドアはわずかに隙間が開いていた。
中からは低い話し声が聞こえる。
「ああ……ああ。わかってる」
和樹さん一人の声しか聞こえないので、誰かと電話しているらしい。
立ち聞きにならないよう、少しドアから身を引いてしばらく待ったあと、静かになったのでそっと覗いてみた。
和樹さんは通話を終えていて、こちらに横顔を向けていた。
長身の彼に黒いタキシードはとても似合っている。
涼やかな横顔は少し顎を上げた伏し目で、壁に掛けられた鏡を見ながら襟元のタイを直していた。
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