551人が本棚に入れています
本棚に追加
そして今、私は彼と並んで祭壇の前に立っている。
写真撮影は細かい記憶が飛んでいて、上の空だったかもしれない。
私を初めて見た和樹さんが「最高に綺麗です」と優しく微笑んだことは覚えている。
控室の一言さえ聞いていなければ、彼の表情と言葉を信じられただろう。
誓いの言葉のあと、指輪を交換する。
彼の手を取る私の指は細かく震えていた。
彼の手を温かく感じるということは、私の手が緊張でかなり冷えていたのだと思う。
長い指に銀色のリングを恐る恐る嵌めながら、これらの儀式が無事に、そして早く終わることを祈った。
もうすぐ終わる。
でも、残されているのは一番恐れていたこと。
「誓いの口づけを」
神父の声で、呼吸が苦しくなった。
とうとう私たちの真実が白日の下に晒されてしまう気がした。
最初のコメントを投稿しよう!