偽りのキスー3

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頭の中はまだ混乱している。 〝ハズレ婚だな〟──氷のように冷たい言葉と、炎のように熱いキスの感触。 どうしても鎮められない胸のざわめき。 短い通路をただ前に向かって歩くだけなのに、会社の事情やさまざまな思惑を抱えた参列者に囲まれたバージンロードは、まるで向かう先の見えない広い海に漕ぎ出すように心細く感じる。 彼の本音を聞いてしまったにも拘わらず、和樹さんの腕の力強さだけが確かなものに思えた。 〝政略結婚でも、結婚はおままごとじゃない〟 今夜、私はこの人のものになるのだろう。 たとえそこに愛がなくても。
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