籠の鳥の孤独ー1

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「大丈夫だよ。あのキスは本物に見えたよ! これは間違いない」 理子は太鼓判を押したあと、続いて私を笑わせてくれた。 「結衣が本物にしたいって思ってるなら、態度で示さなきゃ」 「態度って、例えば?」 「セクシーランジェリーで迫ってみるとか」 理子はまったく本気でないらしく、言いながら笑っている。 「無理だって! 呆れられる図しか浮かばないよ」 「軽く死ぬよね。相手は宮瀬本部長だし、滑ったら氷点下だわ」 二人で大笑いしたあと、理子は明るく私を励ました。 「ハズレ婚とか言ったの、いつか土下座させるつもりでさ。結婚したんだもん、遠慮いらないよ」 「……うん。頑張る」 〝あなたの愛は薄っぺらい〟と言われたことも、一度だってキス以上のことがないことも、肝心な部分は打ち明けないまま、具体的な解決策も見えないままだ。 でも理子のおかげで孤独が癒され、明るい気分になった。
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