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あの日、何かを考える暇もない慌ただしさの中、式と披露宴は無事に終わった。
弟の結婚式に兄である宏樹さんの姿がないことに、もしかすると誰かが疑問を挟んだりしていたのかもしれないけれど、私の耳には入っていない。
注目を浴びることが苦手な私は二度のお色直しが正直苦痛で、それどころではなかったのだ。
お色直しは花嫁の変身を披露するためにやるようなもので、大仰な司会とスポットライトと音楽で再入場する度、隣で笑顔を保っている彼がどう感じているかを考えてしまい、私は身の縮む思いをしていた。
でも複雑な事情に構わず、むしろそれを揉み消すために、披露宴は華やかに盛り上げられた。
経済界の大物も来るとあって、両家だけでなく、ホテル側も威信をかけての総力戦なのだ。
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