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「土日も仕事なんて、宏樹さんの時はなかったのに」
私がため息まじりに言うと、野々花先輩が鋭く反応した。
「〝宏樹さんの時〟って?」
完全に失言だった。
しまった、と思ったけれど、もう遅い。
「やっぱりいろいろあったんじゃないの? 常務はいつのまにか病気療養に切り替わってるけど全然状況報告もないし、不自然に存在を消されてるじゃない」
「……」
「招待状、間違いじゃなかったのよね?」
「……間違いです」
もうほとんどばれているとわかっていても建前を口にした。
でも、専務昇格を知らされていなかったショックのせいだろうか。
それともこの二か月の苦しさとこの二週間の孤独のせいだろうか。
ついに私は心が折れてしまい、演技しきれずに涙ぐんでしまった。
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