籠の鳥の孤独ー2

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「どうしたの? 結衣ちゃん、泣かないで」 「ごめんなさい、大丈夫です」 急いでバッグからハンカチを取り出し、うつむいて目を押さえながら無理に笑った。 「ずっと慌ただしかったので、つい気が緩んでしまいました」 「きっといろいろ大変だったのね」 先輩が労わるように言葉をかけてくれる。 「本部長はポーカーフェイスだから、裏でどれだけゴタゴタしていようとさっぱりわからないわ。いつも同じ調子よ。優しくて紳士で。お面被ってるみたいよ」 私を笑わせようと明るく冗談を言う先輩に合わせ、私も笑う。 「常務は大丈夫なの? 若いのに無期の病気療養って、まさか重病じゃないわよね? まさか、ガンとか不治の病とか……」 「……ガンとかそういうのじゃないです」 「じゃあ元気なのね?」 「……はい。たぶん」 身内だけに〝よく知りません〟とうごまかしもきかない。 認めるしかなかった。
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