籠の鳥の孤独ー2

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「新しい生活はどうかな?」 「順調ですよ」 和樹さんの返答を聞いて身を縮める。 結婚式からほとんど一緒に過ごしていないなんて順調と言うにはほど遠いけれど、まあこう答えるしかない。 「そうか。結衣は休暇中だな? いつ会社を辞めるんだ?」 結婚前にも聞かれた質問だ。 当時はまだ宏樹さんとの婚約中だった。 「あの……。仕事は続けようと思ってるの」 夏目家の高い塀の中で暮らしてきた私は、就職で初めて広い社会に触れ、自分もその担い手になりたいと強く思うようになっていた。 ここで辞めたら再び籠の鳥になってしまう。 今の和樹さんとの生活に、まだ未来は見えていない。 でも私の返事を聞いた父の顔はみるみる不機嫌になった。 父がそんなことを承知するはずがないのだ。
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