籠の鳥の孤独ー2

6/26
前へ
/26ページ
次へ
「言いたい者には言わせておけばいいんじゃないでしょうか」 和樹さんは微笑んで、膝の上で握り締めている私の拳に手を重ねた。 不意打ちの親密な仕草に驚き、私の顔が赤くなった。 「男女雇用に関して古い感覚の人間はうちの社にはいませんし、世間にいたとしてもそのうち消えるでしょう。兄のこともご心配頂きありがとうございます」 父は何かを言い返そうとしたけれど、赤らんだ私の顔を見ると満足そうな表情になり、お茶をすすった。 父をいとも簡単に黙らせた和樹さんを頼もしく感じ、まるで守られているような心地になった。 話題の終了とともに重ねられていた手が外され、隣をそっと見上げる。 もう少しだけ触れていて欲しかった。 でも、彼の横顔は冷ややかに微笑んで父を見ているだけだった。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

507人が本棚に入れています
本棚に追加