籠の鳥の孤独ー3

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「えー、わからないよ。大福の件があるじゃん。あれって絶対、結衣が柑橘類好きなの知ってて喜ばせようとしたんだよ」 「そうかなぁ」 でも私が柑橘類好きだということは、和樹さんに言ったことはない。 つい期待してしまう自分を戒めていた私の脳裏にふと、野々花先輩から聞いた疑問が過った。 彼の退社時間と帰宅時間が合わないという件だ。 幸せな気分に水を差す情報が恨めしい。 理子は呑気に大福の恨みを吐き出し始めた。 「あの時の結衣ったらケチだったよねー。一個ちょうだいって言っても絶対くれなかったじゃん。ちょうど二個あったのにさ」 「だってあれは貴重品だったの! 家で一緒に食べる約束したから」 結局、あの大福は朝ごはんの時に和樹さんと二人で食べた。 前の日より少し固くなっていたけれど、十分に美味しかったし、何より二人で食事をとれたことがうれしかった。
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