籠の鳥の孤独ー3

17/21
469人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
いやいや、和樹さんがそんなことをしてくれるはずがない。 それでも想像してしまうので、私は気を紛らわせようとパントリーの掃除を始めた。 そこに理子が遅れてやってきた。 「結衣、掃除までしてるの? 偉いなぁ」 「家に帰っても暇だからね」 すると理子は「あ」と何かを思い出したようで表情を曇らせた。 「あのさ、結衣。この間、私に打ち明けてくれたこと、他の誰かにも言った?」 「ううん。……あ、秘書の横谷野々花先輩は知ってるよ」 「それだけ?」 頷く私に、理子は首を傾げながら「それだったら大丈夫だよねぇ……」と呟いたあと、言いにくそうに声をひそめた。 「結衣たちがうまくいってないって、噂が立ってるみたい」 「えっ……?」 一瞬ぎくりと身をこわばらせてから、私は慌てて笑みを取り繕った。 「あれだけ仕事してたら、噂も立つよね。新婚旅行に行ってないのは周知の事実だし」 軽く受け流そうと強がってみたけれど、気分がいいものではない。 それに、事実と反してれば笑い飛ばせるけれど、当たらずとも遠からずなのだから。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!