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いやいや、和樹さんがそんなことをしてくれるはずがない。
それでも想像してしまうので、私は気を紛らわせようとパントリーの掃除を始めた。
そこに理子が遅れてやってきた。
「結衣、掃除までしてるの? 偉いなぁ」
「家に帰っても暇だからね」
すると理子は「あ」と何かを思い出したようで表情を曇らせた。
「あのさ、結衣。この間、私に打ち明けてくれたこと、他の誰かにも言った?」
「ううん。……あ、秘書の横谷野々花先輩は知ってるよ」
「それだけ?」
頷く私に、理子は首を傾げながら「それだったら大丈夫だよねぇ……」と呟いたあと、言いにくそうに声をひそめた。
「結衣たちがうまくいってないって、噂が立ってるみたい」
「えっ……?」
一瞬ぎくりと身をこわばらせてから、私は慌てて笑みを取り繕った。
「あれだけ仕事してたら、噂も立つよね。新婚旅行に行ってないのは周知の事実だし」
軽く受け流そうと強がってみたけれど、気分がいいものではない。
それに、事実と反してれば笑い飛ばせるけれど、当たらずとも遠からずなのだから。
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