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「でも、私が聞いたのはそれだけで、常務のことは何も言ってなかったよ」
「……常務?」
常務って誰のことだろうと考えてから、宏樹さんのことだと思い出して自分に呆れた。
あんなに長く婚約者だった人を、わずか三ケ月で忘れてしまうなんて。
でもそれはある大切なことを私に自覚させようとしていた。
そんな私の隣で、自分のマグを洗い終えた理子が、私を元気づけるように明るく喋り始めた。
「もう公私混同でもいいからさ、思いきり会社でイチャイチャしちゃえば? 愛妻弁当は?
オムライスにケチャップでハートとか」
「そのまんま残されたら、立ち直れないよね」
理子らしい単純で元気な作戦に笑ってしまった。
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