籠の鳥の孤独ー3

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翌日、広島から帰京した彼と最初に会ったのは家ではなく会社だった。 昼過ぎの飛行機だったらしく、夕方に帰社したところにばったり遭遇した。 廊下の向こうから一泊用のバッグを手に歩いてくる和樹さんを見つけた時、私は嬉しくて思わず足を止めて見つめてしまった。 結婚してから社内で出くわすのは初めてだ。 でも彼との距離が近づいてくると、彼の視界に入る前に身を隠さなければと焦った。 婚約が公になった日、この場所で冷ややかに無視されたことを思い出したのだ。 廊下だけに逃げ場がなく、回れ右をしようと思った時、和樹さんと目が合ってしまった。 「お疲れ様です」 夫婦であっても社内なので、壁際に寄って控えめに頭を下げる。 そのまま去っていくのかと思いきや、彼は私の前で立ち止まった。 「ちょっと僕の部屋まで、いいかな。十分ほどなので」 「は、はい」
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