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先輩と別れ、重い心を抱えて自宅に帰った。
和樹さん不在の夜で良かったと思う。
あんなことを聞いたばかりでは、いくら素知らぬ顔で静観すべきだと言われても、今日の今日だけは彼に笑いかけるのは無理だ。
食欲はなかったけれどとりあえず何か食べなければと、冷蔵庫にあるもので適当に夕飯を作った。
でも、味はほとんどわからない。
勉強道具を出し没頭しようとするのに、自分の中の何もかもがえぐり取られたように、空しくて苦しくてならなかった。
思わず点けたテレビでは、恋愛ドラマをやっていた。
それは道ならぬ恋に溺れるヒロインのストーリーらしく、男性との逢瀬のシーンが流れ始めると、私は耐えられずにリモコンを探した。
電源を切ろうとしているのにリモコンの電池残量がないのか手元が狂っているのか、テレビはなかなか反応してくれない。
画面では男女が抱き合っている。
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