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リビングに息詰まるような静寂が落ちた。
彼の目は一瞬の動揺のあと、まるで静かな湖面が波紋を飲み込むように、感情の揺れを消してしまった。
「……それがどういうことなのか、結衣さんが本当にわかって言っているとは思えない」
長い沈黙のあと、和樹さんは冷静な声でそう言った。
「ちゃんとわかってます」
彼から目を逸らさず、じっと見つめる。
しばらく黙って私を見つめていた和樹さんは、冷ややかな表情を浮かべた。
「もし本気なら――今ここで服を脱いで、僕に裸を見せられますか?」
言われたことが一瞬遅れて思考に届き、少なからずショックを受けた。
〝好きな男とは別の男に、身体を好きにさせるということですよ〟
婚約を公にした日の言葉が蘇る。
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