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羞恥で決意が挫けてしまいそうなので、身体は見ずにただ彼の顔を見つめた。
もし彼の顔に軽蔑の色が浮かんだら、きっと私は手を止めてしまっていただろう。
ほんのわずかな風で消えてしまいそうな勇気にしがみつき、手をかけていた三つ目を外した。
もう胸元ははだけてきているらしく、肌を守っていた薄い布の感触がなくなり、冷ややかな空気が胸の谷間に入り込んでくる。
四つ目に指をかけた時、和樹さんの呻くような声が飛んだ。
「もういいです」
ボタンにかけた指がビクッと震えて止まる。
拒絶? 嫌悪? 軽蔑?
でも、和樹さんはそのどれともつかない表情だった。
苦しそうに見えるのはなぜだろう?
彼は私から視線を外し、グラスに残ったブランデーを一気にあおった。
「……寝室で待っていてください。シャワーを浴びてきます」
グラスを置き、彼は両手で顔を覆って大きく息をつくと、それだけ言い残してリビングから出て行った。
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