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「理子ちゃんは夏休みどうするの?」
社員食堂に繋がる長い廊下を歩きながら理子ちゃんに尋ねた。
「高校の時の友達とカナダに行くことになったの。九月だから空いてたんだよね」
「わあ、初海外だね」
「そうなの! という訳でパスポート申請のため、今日は定時にダッシュで消えますのでよろしく」
理子ちゃんがふざけて私にお辞儀する。
「いいなぁ。先越されちゃったよ」
「結衣はどうするの? 専務と休みを合わせられた?」
「うん」
トレーと持って列に並びながら、私は頬を緩めた。
「でも行先は海外じゃないの。和樹さんが休める日程が限られてるから予約はとてもじゃないけど取れなくて」
ここでは人の耳があるので声を少し落とした。
でも理子ちゃんはそんなことはお構いなしに冷やかしてきた。
「なーに結衣ったら残念そうな顔してるつもりだろうけど、超嬉しそう」
私は演技が下手らしく、簡単に見破られてしまった。
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