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「最近ちょっと感じてた」
空いた席にトレーを置きながら理子ちゃんが言った。
「感じてたって、何を?」
理子ちゃんを見習い、私も素早く向かいの席を確保しつつ、何気なく聞き返した。
「結衣、ここんとこ急に色気が出てきた」
「色……」
ちょうど置こうとしたトレーが滑って、お味噌汁をこぼしそうになる。
「はは、図星だ」
「違うって」
「いやいや。ほんと新妻って感じ。お肌ツヤツヤだし、愛されてる感が」
「もう、やめてよー」
台拭きでテーブルを拭いていた私は、視線を感じてふと顔を上げた。
理子ちゃんの背後の通路には、トレーを持った野々花先輩が立っていた。
その横には先輩の秘書仲間が二人ほどいて、残念そうな顔で遠くをきょろきょろと見回している。
どうやら私たちと同じ席を狙っていたらしい。
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