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「あっ、先輩、すみません!」
一度腰を下ろしていたのに、慌てて立ち上がった。
「お急ぎですか?」とたずねると、先輩より先に、別の秘書が私に気づいて笑顔で答えた。
「大丈夫よ。ほら、あそこらへん大量に空いたわよ。行こう行こう」
ほっとして腰を下ろすと、野々花先輩が振り返った。
「電話するね、結衣ちゃん! 伝えなきゃいけないことあるし」
「あ、はい」
投げつけるような言葉にやや面喰いつつも、先輩たちが無事に席に落ち着いたのを見届けて箸を取る。
秘書は時間がタイトで、きっとお昼も慌ただしいだろう。
「今のが前の職場の先輩? 今は専務秘書の」
「そう。綺麗な人でしょ?」
「そうだねぇ……」
理子ちゃんは言葉を濁し、少し考えてから食べ始めた。
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