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「近すぎるよ。海外に逃げなきゃ、専務だとすぐ呼ばれちゃうんじゃない? 緊急の問題が発生しました、みたいに電話かかってきてさ」
「それがちょっと心配だけどね。お休みを取るのが急だったし、近場なのは仕方ない」
そうは言いつつ、那須は私にとって特別な場所だった。
なぜなら、私と和樹さんが共通の思い出を持つ土地だからだ。
ただ、その思い出には宏樹さんという曰く付きの存在も幅を利かせているけれど。
「さっきの目が笑ってない秘書さんから電話かかってくるよ、那須まで」
「もう、まだ言ってる。野々花先輩はいい人だよ」
理子ちゃんをたしなめながら、さきほどの野々花先輩の言葉が妙に気になった。
メールでもなく、わざわざ電話するって、いったい何だろう……?
それは、その夜すぐに明らかになった。
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