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夕飯の支度を終え、時刻を確認した私はリビングで勉強道具を広げた。
時刻は九時。
まだまだ彼は帰らないだろう。
とはいえ最近はほんの少しだけ和樹さんの帰りが早くなり、出張や接待でない限りは自宅で夕食を摂ってくれる。
外食しなくなった分だけ、帰宅が早まったということだろうか。
それは彼が前の恋人の所に足繁く通っている訳ではないことを示していて、二人を引き裂いてしまった罪悪感がありつつも、ようやく心の平穏を得た気分だった。
また宮瀬社長からも直々に「和樹が忙しすぎて申し訳ない」と電話があったので、彼が正真正銘多忙であることは理解していた。
それに、疲れていても求めてくれるし……。
前の晩のことを思い出して一人で照れてから、咳払いをして座り直した。
過去問集を開いて読み始めた時、スマホが鳴った。
喜び勇んで覗いた画面には彼ではなく、野々花先輩の名前が表示されていた。
がっかりしてしまった私は失礼な後輩だと思う。
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