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和樹さんは目を閉じてだるそうに壁で身体を支えていて、かなり強くブランデーの匂いがした。
これまで彼がお酒に酔った姿は見たことがない。
結婚式の際、大量に飲まされても平然としていたのに、今日はいったいどれだけ飲んだのだろう?
「食事、食べるよ」
目を閉じて壁に寄り掛かかる彼の言葉からは、普段の敬語も抜けている。
「食べるって……とにかくまず水を……」
酔った人の介抱をしたことがない私はおろおろと周囲を見回した。
きっと一度横になると彼はもう起き上がらないだろう。
私の力では彼を運べないので、彼の腕を引いて寝室へ促した。
「お水を持って来ます」
急いでキッチンで水を汲み、彼の元に戻ると、和樹さんは片腕を顔に当てて横たわったままだった。
「少しだけ起き上がってください。お水を飲んで」
水を飲み終えた彼は「ごめん」と呟いてまた目を閉じた。
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