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「もう一杯、お水を飲みますか?」
「いや……大丈夫。ありがとう。ごめん……」
目を閉じたまま、彼は再び謝った。
こんなに酔うまで飲むなんて、いったいどうしたのだろう?
何をしてあげられるのかしばらく考えた末、着替えを用意して寝室に戻った。
「和樹さん。着替えてから寝た方が休めると思います」
返事がないので彼の傍らにそっと腰を下ろし、少しためらってからネクタイに指をかけた。
真面目な和樹さんらしいと言うのか、こんなになるまで飲んでいるのにネクタイは緩めもせず、昼間の仕事の時と同じく固く結んだままだ。
和樹さんは目を閉じたまま、規則正しい呼吸を繰り返している。
これまでに男性のネクタイを解いたことがない私は、彼を起こしてしまわないよう気をつけながら、真剣に結び目と格闘した。
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