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ようやく解き、それから襟元のボタンを三つほど外した。
着替えはさせてあげられなかったけれど、これで少しは楽になっただろう。
空のグラスを持ち、部屋を出ようと立ち上がった私は、彼を振り返ってまたベッドに腰を下ろした。
ぐっすり眠ってしまったのか、動かない彼を見つめる。
端正な顔にかかる前髪は少し乱れていた。
なぜかそれが愛おしさを余計に増して、胸がいっぱいになる。
好き、好き、好き……。
口にできたらどれだけ幸せだろう。
ここまで飲むなんて、好きな人と一緒になれなくて苦しんでいるのだろうか。
哀しみと愛が心に染みていく。
身を屈め、口にできない愛をこめて、彼の頬に口づける。
乱れた前髪をそっと撫でつけて、もう一度。
その時だった。彼が目を開けた。
「あ、ご、ごめんなさい……!」
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